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岡山地方裁判所 平成6年(ワ)460号 判決

原告

山﨑敏子

被告

藤田雅美

主文

一  被告は、原告に対し、金一三〇〇万二七〇九円及び内金一一八〇万二七〇九円に対する平成三年七月一二日から、内金一二〇万円に対する平成六年五月二二日から支払済まで、年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は一〇分し、その八を被告の負担、その余を原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

被告は、原告に対し、一五六七万八三七二円及び内金一四二七万八三七二円に対する平成三年七月一二日、内金一四〇万円に対する平成六年五月二二日から支払済まで、年五分の割合による金員を支払え。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  交通事故(以下「本件事故」という。)の発生

(一) 日時

平成三年七月一二日午後六時四〇分ころ

(二) 場所

岡山県岡山市大福七二一番地先県道上交差点(以下「本件交差点」という。)

(三) 原告車

自動二輪車(岡山市る四七八二)

(四) 被告車

普通乗用自動車(岡山五〇ち二七四三)

(五) 態様

原告車は、本件交差点を北方向から南方向へ向かつて直進中、同交差点を南方向から北方向へ向かつて原告車に対向して走行していた被告車が、本件交差点内で右折し、被告車の右前部が原告車の右側の座席下部分に衝突し、原告は、直進方向左前方の路上に投げ出された。

2  原告の被害

(一) 臀部腰部打撲傷、左膝部打撲傷、第二腰椎圧迫骨折、仙骨骨折、馬尾神経損傷

(二) 入院(かつこ内実日数)

中島病院に平成三年七月一二日~九月二九日(八〇日)

(三) 通院(かつこ内実日数)

中島病院に平成三年九月三〇日~同四年六月一日(一四六日)

岡山労災病院に平成四年六月一七日~同五年四月一日(六三日)

(四) 後遺症

平成五年四月一日症状固定(自賠法施行令第二条後遺障害別等級表一一級七号)、第二腰椎圧迫骨折、第二腰椎上縁で硬膜の前方部の圧排、右下肢、腰に痛み及び違和感(右症状は今後不変)。右下肢にビリビリする違和感、尾骨部の痛み、坐位を保てない。

3  損害

(一) 治療費 三万一五八一円

(二) 入院付添看護費 一二万三五〇〇円

一九日間、近親者

六五〇〇(円、日)×一九(日、平成三年七月一二日~七月三〇日)

(三) 入院付添人交通費 二二八〇円

原告住所地から中島病院まで一九日間往復し、ガソリン代の単価は、一km一五円、四km

四(km)×二×一五(円)×一九(日)

(四) 入院雑費 一一万二〇〇〇円

一四〇〇(円、一日)×八〇(日)

(五) 通院交通費 三万六四二〇円

原告住所地から中島病院まで片道四kmを自動車で一四六日、一万七五二〇円、原告住所地から岡山労災病院まで片道一〇kmを自動車で六三日、一万八九〇〇円

四(km)×二×一五(円)×一四六(日)中島病院

一〇(km)×二×一五(円)×六三(日)岡山労災病院

(六) 装具 四万〇七一九円

腰椎傷害治療のための装具

(七) 休業損害 一八五万〇四三六円

〈1〉 平成三年七月一二日(本件事故日)~九月二九日(入院)~平成四年一月五日(通院)、八二万九四〇〇円、原告の収入月額一四万三〇〇〇円(基本給一三万一〇〇〇円+精勤手当一万二〇〇〇円)、一四万三〇〇〇(円)×(五(月)+二四(日)/三〇(日))、〈2〉平成四年一月~一一月、欠勤又は遅刻のため、精勤手当一三万二〇〇〇円不支給、欠勤控除合計一一万六四五六(円)、遅早退控除合計四六万四三八〇円不支給、合計七一万二八三六円、〈3〉平成三年一二月の賞与七万六〇〇円、平成四年七月の賞与一四万五二〇〇円、最低保証額二六万二〇〇〇円との差額合計三〇万八二〇〇円

(八) 逸失利益 一〇一四万九三五七円

症状固定時四四歳(昭和二三年七月一〇日生)の健康な女子、平成四年賃金センサス、四〇歳~四四歳女子平均賃金年額三三七万三〇〇〇円、労働能力喪失率二〇%

三三七万三〇〇〇円×〇・二×一五・〇四五=一〇一四万九三五七円

(九) 慰謝料 五八〇万円

入通院二三〇万円、後遺症三五〇万円

(一〇) 弁護士費用 一四〇万円

(一)~(九)合計一八一四万六二九三円から後記填補額三八六万七九二一円を控除した一四二七万八三七二円の一〇%相当額

よつて、原告は、被告に対し、前示3(一)~(一〇)の合計額一九五四万六二九三円から填補額三八六万七九二一円(自賠責、任意保険等三七二万八〇二五円、労災一三万九八九六円)及び弁護士費用(一〇)を除いた一四二七万八三七二円に対する本件事故の日である平成三年七月一二日、(一〇)に対する訴状送達の日の翌日(平成六年五月二二日)から支払済まで、民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払うことを求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1は認める。

2  同2は認める。

3  同3(一)は知らない。(二)は争う。六万八四〇〇円(三六〇〇円×一九日)が相当である。(三)は認める。(四)は争う。八万円(一〇〇〇日×八〇日)が相当である。(五)は認める。(六)は知らない。(七)は知らない(入院の始期、終期は認める。)休業損害の日数は、入院期間と通院実日数の合計とすべきである。(八)は知らない。労働能力喪失率は、経年の馴れによる労働能力の向上を考慮し、症状固定の後二年間は二〇%、三年目~七年後一四%、八年目~一五年後九%、一六年目~六七歳は五%とすべきである。(九)は争う。(一〇)は争う。

三  抗弁(過失相殺)

本件事故の発生には原告にも過失があり、その割合は二〇%である。

四  抗弁に対する認否

否認する。

第三証拠

本件記録中の書証目録及び証人等目録の記載を引用する。

理由

一  請求原因について。

1  請求原因―について。

争いがない。

2  請求原因2について。

争いがない。

3  請求原因3について。

本件事故によつて原告に生じた損害中、被告に損害賠償を命じることが相当な金額は、次のとおりである。

(一)  治療費(自己負担分) 三万一五八一円

甲八~一〇号及び弁論の全趣旨によつて認められる。

(二)  入院付添看護費 七万六〇〇〇円

入院日数については、後記(七)のとおり争いがない。

一日四〇〇〇円、一九日

(三)  入院付添人交通費 二二八〇円

争いがない。

(四)  入院雑費 八万円

一日一〇〇〇円、八〇日

(五)  通院交通費 三万六四二〇円

争いがない。

(六)  装具 四万〇七一九円

甲一二~一五号証原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によつて認められる。

(七)  休業損害 一〇〇万円

入院期間の始期及び終期については争いがなく、甲四~三八号証、原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件事故による主として腰椎の傷害のために、平成三年七月一二日から同四年一月五日まで自宅療養(休業)をせざるをえなかつたこと、石川工業株式会社の規定上、〈1〉原告が本件事故前に勤務していた石川工業(事務職)の原告の本件事故当時の原告の月額給料は、一四万三〇〇〇円(基本給は一三万一〇〇〇円、精勤手当一万二〇〇〇円)であつたこと、したがつて、右期間の原告の給与は、一四万三〇〇〇(円)×五(月)+二四(日)/三〇(日)で、七一万二八三六円となること、〈2〉原告は、平成四年一月~一一月、欠勤又は遅刻のため、精勤手当一三万二〇〇〇円、欠勤控除合計一一万六四五六(円)、遅早退控除合計四六万四三八〇円、合計七一万二八三六円を支給されなかつたことになること、〈3〉原告は、平成三年一二月の賞与七万六〇〇円、平成四年七月の賞与一四万五二〇〇円を受けたこと、右賞与の、最低保証額(口約束ではあるが)は二六万二〇〇〇円であつたこと(現実支給額との差額合計三〇万八二〇〇円)、他方、原告が得た給料の支給金額合計は、本件事故直前月の平成三年六月が一一万二五六一円(稼働日数二二日)、五月が六万四四四八円(稼働日数一一日)であつたことが認められ、このことと、原告が、石川工業で働くのに加えて家事、農業に従事していたこと(原告本人尋問)を総合すると、原告の休業損害は一〇〇万円を認めるのが相当である。

(八)  後遺症による逸失利益 一〇〇〇万四六三〇円

原告本人尋問及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件事故時四三歳の女子、本件事故時前は会社勤務で営業事務、家業の農業、主婦であつた。

賃金センサス平成三年第一巻第一表、産業計、企業規模計、学歴計四〇~四四歳の女子労働者平均は三二二万七三〇〇円、労働能力喪失二〇%。

被告は、経年による馴れを考慮して労働能力の減少割合を段階的に減少してみるべきであると主張するが、経年によつて悪化する場合があり、減少するとばかりはいえないから、右主張は採用できない。

三二二万七三〇〇×〇・二×一五・五〇〇=一〇〇〇万四六三〇円

(九)  慰謝料 四四〇万円

一八〇万円、後遺症二六〇万円

(一〇)  弁護士費用 一二〇万円

二  抗弁(過失相殺)について。

甲二、三、三九号証、原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、本件交差点を原告は通常の走行方法で青信号に従つて直進し、被告は、対向車(原告車が直進しつつあるのを知りながら原告車の前を横切ることができると速断し、被告車の右前部を原告車の右横に衝突させたことが認められる。右事故の態様からみると被告は、本件事故による責任を全面的に負うべきものである。

三  認容基礎額 一三〇〇万二七〇九円

前示一3(一)~(一〇)の合計額から既払額を控除。

四  結論

以上の次第で、被告は、原告に対し、次のとおり、本件事故によつて原告に生じた損害を賠償するべきである。

1  前示三の金額

2  右金額の内、弁護士費用を除いた金額に対する本件事故の日である平成三年七月一二日及び弁護士費用に対する訴状送達の日の翌日である平成六年五月二二日から支払済まで、民法所定年五分の割合による遅延損害金

よつて、訴訟費用の負担について、民訴法八九条、九二条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 池田亮一)

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